言葉の使い方と悪者という決めつけのお話
バチンっ!
今住んでるアパートは、けっこう上の階の音とか会話が聞こえる。
真上の部屋に住んでるのはカップルさん(たぶん)。
ある日の夜、
冒頭に書いた明らかに皮膚と皮膚がぶつかり合うような打撃音が聞こえた後に、
彼女さんの発狂してるような声が聞こえてきた。
彼女さん ”ねぇ!!『かける』のはやめてって言ったよね!?”
僕 ”(大声の喧嘩は近所迷惑になるよ)”
彼女さん ”ホントに最悪なんだけどっ!!”
僕 ”(最悪ってどんだけ怒ってんのよ。)”
彼女さん ”今度『かけ』たら別れるから!!”
僕 ”(その『かける』って何)”
彼女さん ”ホントに嫌なの!!オナラかけられるの!!”
僕 "オ・ナ・ラ"
僕の辞書の中で『かける』の前にくる目的語は”布団”と”カレーのルー”しかなかったが、
新たにオナラが加わった瞬間である。
日本はすこぶる平和だなと思いました。
PTとしてあるまじき失態
そんな話はさておき、
このブログでも少し出てきますが僕はジムでトレーニングをやっています。
その中で、
女性の好きなパーツ上位ランカーである大胸筋をパンプアップさせるために、
ベンチプレスに重きを置いて鍛えています。安西先生、モテたいです。
そして、目標重量にもうすぐで到達できそうなので、
他の種目を減らしてベンチプレスに集中して取り組んでいました。
極端に重量を増やしたりはせずフォームも崩さないように注意してやっていたのですが、徐々に左肩に違和感が出現。
しまいには、日常生活で挙上した時も肩峰下あたりがピンポイントで痛むようになってしまいました。
今、身体治す人が自分の身体壊してどーすんのって思った人もいるでしょう。
そんな怒らないで。理学療法士だって人間だもの。
原因を突き止めるのが理学療法士である
肩峰下インピンジメントは、肩峰と骨頭で肩峰下腔の組織が挟み込まれる病態。
肩峰下インピンジメントって聞くと、
おそらく多くの理学療法士が頭に浮かぶのが『インナーマッスルとアウターマッスルの不均衡』による骨頭の上方化。
僕の症状ももれなく、なんらかの原因で骨頭が上がりやすくなっちゃったのかなとざっくり推測。
最近来た患者さんでも、
同じようにウェイトトレーニングで肩峰下に痛みがあり肩が上がらなくなった人がいた。
この人もカフexを少しやっただけで可動域が広がったりしたので、ますます僕自身の原因もそこにあるのかなと思い、さっそくカフex(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋)を実行。
…あまり効果なし
安易な推論はダメっていうことを実感し、今までのトレーニングメニューを見直す。
その中で最近減らした種目に着目。
ショルダープレス
サイドレイズ
リアレイズ
バイセップスカール
ショルダープレス・サイドレイズ・リアレイズは、三角筋を中心にしたトレーニング。
…異彩を放つバイセップスカール。
僕の中でのイメージは、上腕二頭筋=悪者。
肩の機能障害がある人は肘屈曲位で挙上している人が多いし、上腕二頭筋の過剰収縮がけっこうみられる。
短頭に関しては烏口突起に付着してるから、scapular dyskinesis(肩甲骨の運動異常)の原因にもなりうる。
先生によっては、骨頭の上方化作用があるって人もいる(走行的にたぶん短頭)。
でも、学生の時に読んだ信原先生の『肩』には、上腕二頭筋(たぶん長頭)は骨頭のDepression効果ありって書いてあった記憶もある…。(間違ってたらごめんなさい)
そこで、”上腕二頭筋の骨頭下制作用の論文はないかの~”ということで、
論文検索サイトPubmedで「Biceps depression」で検索。
すると、日本人が書いた英論文発見!
絶対日本語論文もあると思い、調べると見つかりました。
『腱板断裂肩における上腕二頭筋の上腕骨頭上方化抑制作用』
ただし、20年くらい前の論文という。笑
大まかに内容説明すると、
上肢挙上0~90°までの骨頭の位置を、
腱板断裂群と健常群に対して、
上腕二頭筋への負荷ありなしで比較したよっていう研究。
結果は、
上腕二頭筋の負荷ありだとどっちの群も骨頭下制して、
特に腱板断裂群の上腕二頭筋の負荷ありは健常群の通常の挙上時に似た上腕骨頭中心の移動を示したよと!
ということで、僕自身もバイセップスカールを再開するとどうでしょう
…挙上時の痛みもなくなったし、ベンチプレスも調子良い!!
今まで悪者だと思っててごめんね、バイセップス。
全員とは言わないけど、肘屈曲位で上げちゃってる患者さんは、
上腕二頭筋優位の使い方をしてたから肩の機能異常が起こるんじゃなくて、
上腕二頭筋が超絶頑張って骨頭を下制しないといけないぐらいの肩周囲の環境になってたのかもしれませんね。
こうみると、上腕二頭筋長頭は深層に位置してるし、インナーマッスルの部類になりうるのではとか考えてみたり…。
ただし!
おそらくこういうやり方はビミョーで(機能的に使うという意味で)
しっかり胸椎伸展と肩甲骨後傾を保った状態でやらないと、
正しい使い方にならないし、
よりscapular dyskinesisを助長しかねないし、
最悪骨頭の前方偏移のストレスで長頭腱損傷にもなりかねないかも…。
今後、上腕二頭筋の機能も臨床の中で探っていこう。
今回紹介した論文は古いし、
僕が困っていたベンチプレスの肢位や挙上最終域とは異なる肢位での研究でしたが、
ヒントとしては十分なものだったんじゃないかと勝手に思っております!
論文だけでもなく臨床だけでもなく、様々な側面から考えられる理学療法士になりたいっす!