吾輩は理学療法士である。

理学療法士が綴る、論文や本、日々の出来事のお話

青年よ、教科書を疑え!!のお話

”僕はいつも「ネイチャー、サイエンスに出ているものの9割は嘘で、10年経ったら残って1割だ」と言っていますし、大体そうだと思っています。”

 

教科書に書いてあることを信じないこと、
常に疑いを持って「本当はどうなっているのだろう」
と。

自分の目で、ものを見る。そして納得する。そこまで諦めない。”

 

これは、今年ノーベル医学・生理学賞を受賞した、本庶佑(ほんじょ たすく)氏の言葉。

この言葉を聞いただけでも、ノーベル賞を受賞したということがスッと腑に落ちるような、とても深くて感銘を受ける言葉だ。

 

 

でも、やっぱり教科書って信じちゃうよね。
教科書ってすべての答えが載ってるようなイメージがあるから。

数学とかは、
数式や定理みたいな明確なルールに則ってるから
唯一無二の答えがあるかもしれないけど、
医療ってそうもいかない。

人間はブラックボックスだし、クローンのように同じ個体なんていない。

つまり、100%っていう答えはない。

 

だからこそ、本庶氏の

 

教科書に書いてあることを信じないこと、
常に疑いを持って「本当はどうなっているのだろう」と。

 

っていうのは、少し刺激が強いがとても核心をついてる。

 

で、今回は、
そんな冒頭の言葉を少し説明できるような論文を読んだので、紹介したいと思う。

 

解剖学的形状のウソ・ホント

 

 

Arthritis of the subtalar joint associated with sustentaculum tali facet configuration

 

この研究は、191肢の距骨下関節の形状を調べて、
その形状と関節炎がどう関連してるかを調査したもの。

 

通常、教科書に書かれている距骨下関節はこうである。

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医療従事者ならわかると思うけど、
前・中・後に関節面が分かれている、と記載されている。

 

しかし、論文に書かれているのはこう。

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大まかに分けると3種類で、

前・中がつながっているlong facet type(a+b)

教科書記載の前・中が分かれている2 facet type(c)

前がなくて中だけmedial facet only type(d)

 

正直、破格があるのは当然なので、ここまではさほど驚くことではない。

だけど、注目したいのは割合である。

 

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教科書に記載されている、2 facet typeは、

全体の約4分の1しかいないのだ。

 

しかも、最近の研究ではなく、この論文は1993年のもの

そして、20年後の2014年に、
まったく別の人種で220肢に同様の調査を行った研究でも
やはり2 facet typeは4分の1しかいなかったのだ。

 

これをどう捉えるかは人それぞれだが、
少なくとも僕はなかなかの衝撃を受けた。


教科書という多くの人が目を通すもの、いわば、多大な影響を及ぼすものに、
さもマジョリティであるかのようにマイノリティを載せているということだ。

 

 

これには、まだ続きがあり、

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いわゆる、前・中関節面部分がなす角度は、
2 facet typeよりもlong facet typeの方がフラットになっている。

ということは、long facet typeは、
荷重をかけた時の距骨の内側への落ち込みを抑えにくいということだ。

すなわち、long facet typeは、
偏平足が多く、不安定になりやすく、関節炎や骨棘が生じやすい。

そして、距骨下関節の形状は生まれた時から決まっており、
身体活動の影響で変化することはないといわれている。

だから、もともと偏平足になる素質を持った人って6割前後いるよという事実を
知っておくべきなのかもしれない。

そうすれば、足関節に過剰に執着せずに、例えば、
他の関節でどう代償させてあげるかっていう広い視野で見ることもできるかもしれない。

 

 

まぁ、でも調べてみると、距骨下の研究はたくさん出てるらしく、
イギリス人(都市型の人)は2 facet typeが多いとかも言われてもいるみたい…。

 

 

切実に思う。医療って難しい。

こういう時は、叫ぶのが一番である。

あー、難しい!!こんちくしょう!!笑

 

 

長々と書いたが、言いたかったことは、

常に疑いを持て!

自分の頭で考えて、納得できるまでやるぞ!

である。

 

 

 

最後に、

ブログで毎回カッコつけたこと書いてるけど、

もちろん読んでる人の気持ちを鼓舞したり、

こういう考え方もあるよっていう提案の意味もある。

ただ、自分に対して書いてる部分もかなり含まれてる。

最近友人から、

”お前と話してて感じるのは、『虚像』っていうこと”

と言われた。

確かに、虚像だなと思った。

でも、『虚像』だけど、それは俺の『理想』でもあるんだよなぁ。

ものすごい自分に劣等感を持ってて、何も行動できてない自分が大嫌いで、

でもそんな自分をぶち壊したいと思ってる、

そんな『俺自身も読者として』、ブログを書いてる。

 

 

…なんか、数日後読み返したら鳥肌立ちそうな文章だけど(笑)、

ウソは言ってないことは確か。

 

 

いつものごとくまとまらなかったので、

やっぱり最後は、武井壮氏の言葉で締めよう。

 

 

”自分の倒し方なんてイージーだ。

『お前今日が人生のピークで、あとは下り坂でもいいのか?』

って問いかけるだけよ。”

 

 

 対自分無敗が最強!

よし頑張ろう!