吾輩は理学療法士である。

理学療法士が綴る、論文や本、日々の出来事のお話

ブラックホールとスペシャルテストという武器のお話

僕のブログのタイトルにもあるように、僕は理学療法士である。

理学療法士とは、身体のエキスパートといっても過言ではないだろう。

 

セラピスト自身の五感を研ぎ澄ましながら、患者さんの些細な機微も感じ取る。

目の前の患者さんが何を感じているのか、何を考えているのかを察して最善の方法を導き出す。

難しい反面、とても尊く奥が深い職業である。

 

 

先日、ある患者様の施術をしていた時、

突然、破裂音のようなものが僕の耳をつんざいた。

 

言葉で表現するのは難しいが、あえて表現するとすれば、

 

 

“ヴぁんっ”

 

 

すぐさま、音が鳴った方向に目をやる。

そこには、この世のものとは思えない光景が広がっていた。

 

 

 

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僕の下半身に小宇宙が広がっていたのだ。

小宇宙を“しょううちゅう”と読むか“こすも”と読むかは皆様にお任せする。

 

とにかく、そこには、すべてを吸い込まんばかりの漆黒が、確かに存在していた。

 

しかし、それと相反し、僕の頭は真っ白になっていた。

そして、その瞬間に患者様の気持ちも同じだということを察した。

 

 

なぜなら、“ヴぁん”という破裂音と同時に、

患者様が“ビュッ”っと身体を震わせたのを感じ取ったからだ。僕は理学療法士である。

 

 

心と身体は切っても切り離せない関係にあるということは、

当然の事実として認識されてきている。

すなわち、今患者様が僕の股間の小宇宙を確認してしまったら最後、

施術効果は非常に落ちてしまうだろうというリーズニングの元、僕がだした最適解がこれだ。

 

 

 

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誰に何と言われようとも、僕は理学療法士である。

 

 

常日頃、患者様に膝が内側に入るような動作は良くないと指導してきたが、

千差万別であるということを医療従事者の人にお伝えしたい。

 

 

武器は持っておいて損はない

 

 

施術中にズボンが破けちゃったという話はさておき、

最近、仙腸関節の疼痛誘発検査についての論文を読んだので紹介します。

 

 

この論文は、

いくつかの仙腸関節の整形外科テストをどう組み合わせたら、

仙腸関節痛の確定・除外診断になるのか、というのを調べたもの。

 

そもそも、どうやってその患者さんが仙腸関節痛だっていう診断を下すかというと、

仙腸関節に注射を打って著効するかで判断しています。

つまり、整形外科テストの陽性・陰性の判定をした後に、注射して著効するかどうかを調べてます。

 

 

結果としては、

 

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Distraction test

 

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Thigh thrust test

 

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Compression test

 

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Sacral thrust test

 

この4つのうち、2以上陽性だったら仙腸関節痛の可能性があり、

すべて陰性だったら仙腸関節痛を除外できるとのことでした!

 

ただし、

陽性尤度比(⇒確定診断の基準で10以上で有効な検査)が4.00で、

陰性尤度比(除外診断の基準で0.1未満で有効な検査)が0.16なので、

確定診断というよりも除外診断としての方が使えるでしょ~

 

 

そして、この検査を使用する上で注意点がございます!

それは、この論文の対象についての情報になります。

 

論文には

こんな人を対象にしてますよ~っていうのと、

逆にこんな人は対象から外してますよ~っていうのが書かれてます。

英語で言うと、Inclusion criteria/Exclusion criteriaって書いてあると思います。

 

 

今回の論文では、

 

Inclusion criteria(取り込み基準)

Patients with buttock pain, with or without lumbar or lower extremity symptoms

殿部痛がある人、腰痛や下肢症状はあってもなくてもOK

 

Exclusion criteria(除外基準)

only midline or symmetrical pain above the level of L5, had clear signs of nerve root compression (complete motor or sensory deficit)

L5レベルの高さより上で正中だけもしくは左右対称の腰部痛の人、クリアな神経根症状の人

 

 

この基準を満たした場合のみ、さっきの結果は適応できるっていうことです!

 

 

あ、でも、やっても無駄って言ってるわけじゃなくて、

この論文の結果をそのまま適応できないよって言ってるだけなので悪しからず。

 

たとえば、

 

20代の人に対する研究なのにその結果を90歳の人に適応できるか

女性のみに対する研究なのにその結果を男性に適応できるか

 

極端に言うと、こんな感じです。

正直効くかもしれないし、効かないかもしれないということですね。

 

 

ちょっと僕が読み取れているのか心配というのと、解釈があっているか心配ですが…

何か、間違っているよとか他にもアドバイス的なものがあれば教えてください。

 

 

論文は論文としての結果をシンプルに受け止めましょう!!

そこから、どう臨床につなげるかは、僕はその人の自由だと思っております。

 

 

何事においても、偏った見方を払拭していきたいですね~!

 

 

すべてに対してリスペクトある姿勢で。

 

Diagnosis of Sacroiliac Joint Pain Validity of individual provocation tests and composites of tests

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16038856